公認会計士になるために受験勉強を頑張ったり下調べしたりする人もいますよね。一方で「公認会計士はやめとけ」と言われたことのある人もいるでしょう。
公認会計士は年収が非常に高かったり、様々な業務に従事できたりするなど強みのある専門職です。
それにもかかわらず、なぜ「やめとけ」と言われやすいのか気になりますよね。
本記事では「公認会計士はやめとけ」と言われる理由を、向いている人の特徴やメリットなどとともに解説します。
公認会計士とは
公認会計士とは、企業が毎年作る財務諸表がルールに基づいたものであるかをチェック(監査)する仕事です。
各企業は成績通知表に当たる財務諸表の正確さを公認会計士に認めて貰うことで、取引先や投資家の信頼を得られます。
なお企業経営のコンサルティングを行ったり、社員として財務部で活躍したりできるのも特徴です。
公認会計士は国家資格でもトップクラスの難易度や信頼性を誇ります。平均年収も900万円前後と高く、中には1,000万円や2,000万円を稼ぐ人までいるほどです。
ちなみに公認会計士は会計や財務のプロであるため、資格を持っているだけで税理士業務にも携われます。
つまり税理士免許がなくても、確定申告書の作成代行や税務調査への対応まで可能です。
公認会計士はやめとけと言われる6つの理由
企業のチェック役であり年収も高い公認会計士ですが、一方で「やめとけ」という声を見かけることもありますよね。
「公認会計士はやめとけ」と言われる理由は以下の6つです。
試験の難易度が非常に高いから
まず公認会計士は「試験の難易度が非常に高い」ことが理由に挙げられます。
公認会計士は国家資格の中でもトップクラスの難易度を誇り、合格率はたったの10%前後です。
また試験に合格するためには、受験勉強に3,000~5,000時間も掛けなければなりません。
毎日6時間勉強するにしても2年間は必要な計算です。なお東大合格も同じくらいの勉強時間が必要になります。
一方公認会計士は弁護士や医師と異なり受験資格がありません。学歴・実務経験・年齢などに関係なく受験できる点では気楽さも感じられるでしょう。
公認会計士として就職できるとは限らないから
また公認会計士は、資格を得ても就職できるとは限らない点でも「やめとけ」と言われます。
確かに公認会計士の資格があれば、周りの人から優秀さは認められるでしょう。
たとえ資格を持っていても、人間性や社会性の面で問題があれば就職の可能性は下がるでしょう。
またいきなり開業した場合も、営業に失敗すれば収入に直結しません。
業務が単調でつまらないから
さらに業務が単調でつまらない点も理由の1つです。
公認会計士の主な業務が企業の監査ですが、実際に作業する際はクライアント企業が作成した決算書などのチェックや指摘を多く行います。
刺激を感じられないことも多く、つまらなさのあまりモチベーションも下がりがちです。
モチベーションの低下で退職さえ考えてしまうことが「やめとけ」と言われる原因でしょう。
人間関係で悩むから
次に人間関係で悩むこともネガティブな理由に数えられます。
公認会計士はたとえ独立していても企業経営者・財務担当者・同業者など様々な人に関わる職業です。
また法人内で財務諸表をチェックする際、チーム単位で動きます。
チームメンバーとうまくコミュニケーションを交わしたり調整したりすることも重要なため、やり取りな苦手な人には大変でしょう。
残業が多い時期があるから
残業の多い時期があることも「やめとけ」と言われる理由です。公認会計士は企業の決算時期と重なる2~5月が繁忙期に当たります。
クライアント企業が多いほど決算表などのチェック案件が大量に舞い込むため、業務量も普段より劇的に多いです。
業務が落ち着くまでの間は毎日残業しなければならず、月に100時間残業するケースさえあります。
AIの台頭で仕事ない・食えないから
最後に「AIの台頭で仕事がなくなる」とされることも理由の1つです。
近年AIの発達が目覚ましく、今後10~20年でAIが多くの単純労働を担うと考えられています。
公認会計士の仕事も財務諸表のチェックなど単純な事務作業が多いため、将来的にAIが乗っ取ると考えられるのも無理もありません。
将来に対する不安から「やめとけ」という声もあります。
公認会計士を辞めた方の退職理由を3つ紹介
公認会計士を目指しても良いかやめるべきかを考える際、実際に辞めた方の声も参考にしたいですよね。
公認会計士の退職理由でよくあるのが以下の3つです。
監査の仕事にやりがいを感じにくかった
まず監査の仕事で「やりがいを感じにくかったこと」が挙げられます。
監査の仕事は書類のチェックやクライアントとの連絡ばかりであるため、している側にとっては刺激を感じにくいです。
来る日も来る日も同じような作業を続けるため、「本当に社会や企業に貢献できているのか」と疑問に思う場合さえあります。
単調作業の日々が続く中でやりがいを見失うことが退職の原因となるケースも多いです。
監査法人の社風や人間関係に悩みがあった
また勤務する監査法人の社風や人間関係の悩みを理由に辞めた人もいます。
人間関係についても監査法人で働いていれば、付き合う人も上司・同僚・クライアントなどと多様です。
ただ上司やクライアントなどとの相性が悪い場合もあります。人間関係が合わない場合もストレスにさらされやすいです。
社風や人間関係は働きやすさにも直結するため、ネガティブに感じると次第に辞めたい気持ちが強まります。
激務でプライベートな時間が持てなかった
他にも激務で「プライベートな時間が持てなかったこと」が原因で辞めた人も多いです。
送られてきた書類のチェック1つでも綿密に行わなければならないため、強いプレッシャーにさらされます。
加えてクライアント企業が多ければ業務量も膨大です。
繁忙期となれば毎日長時間の残業を強いられるため、疲れもどんどん溜まります。
疲れ切っているのにプライベートな時間が持てないことも辞める要因です。
公認会計士になってよかったと感じる6つのメリット
「やめとけ」と言われる理由や退職理由も色々とあるにもかかわらず、公認会計士にはメリットも豊富にあります。
主なメリットが以下の6点です。
平均年収が高い
まず平均年収が高い点が挙げられます。平成30年の「賃金構造基本統計調査」によると、公認会計士の平均年収は891万円で、日本の給与所得者全体の443万円(2021年)の倍以上です。
国家資格では最上位の難易度を誇る点や、企業の命運にかかわる業務に従事していることが大きな要因に挙げられます。
監査法人や企業の財務部で役職に就いたり開業したりすれば、1,000万円以上も狙えるでしょう。
監査業務は独占業務
また監査業務が公認会計士の独占業務である点もメリットです。
企業の財務諸表のチェックや改善点の提案などは公認会計士でなければできません。
監査業務の案件は企業の数だけ存在するため、収入源がなくなることはめったにないでしょう。
一方公認会計士は資格取得の難しさや仕事量の増加から人材不足が深刻です。引く手あまたであるため、多くの求人に挑戦できます。
税理士としても登録できる
公認会計士は税理士としても登録できる点も魅力です。公認会計士は会計関係では最難関資格であるため、資格取得とともに税理士としても登録・開業できます。
手続きも必要な費用約20万円や必要書類を提出した上で、税理士協会が行う面接や審査をクリアするだけです。
公認会計士の業務以外に加えて税金関係の業務にも当たれるため、より多くの仕事に携われます。
働き方や業務に幅を持たせられる
働き方や業務に幅を持たせられるのも公認会計士の強みです。公認会計士として働く場合、一般的には監査法人や一般企業の財務部に所属します。
ただ正社員として働く以外にも、個人事業主・フリーランスやアルバイトとして働くのもおすすめです。アルバイトでも日給5万円の案件があるため、月給100万円も狙えます。
また企業経営や税金関係についても深い専門知識を持っているため、税理士や経営コンサルタントとして働くのも良いでしょう。
仕事の内容を色々と組み合わせることで、非常に高い年収を得たり長く働いたりできます。
AIが台頭しても仕事がなくならない
公認会計士は単純作業も多いものの、AIの台頭による影響は受けにくいです。
確かに書類のチェック作業やデータ入力などはAIが代替するものの、コンサルティングや企業との話し合いは公認会計士の力が欠かせません。
簡単な事務作業はAIに任せる代わりに、企業経営者への提案業務や担当者とのコミュニケーションに集中できるでしょう。
公認会計士ならではの業務は色々と残るため、AIの台頭について心配する必要はありません。
日本経済への貢献度も高い
公認会計士は日本経済への貢献度も非常に高い職業です。日本の経済を支える大手企業も財務状況について信頼されなければ、存続すら危ぶまれます。
必要な資金の確保にも繋がるため、事業運営や投資を続けられます。
公認会計士は業務を通じて日本の経済に貢献している存在と言って良いでしょう。
公認会計士に向いている人の5つの特徴
公認会計士を目指す上で自分が向いているのか気になりますよね。
公認会計士に向いている人の特徴は以下の5つです。
地道な作業を苦に感じない人
まず「地道な作業を苦に感じない人」は公認会計士に向いています。
公認会計士の仕事は企業が作成した財務諸表のチェックなど事務作業も非常に多いです。
専門知識を駆使してチェックするとはいえ、慣れているほど単調な作業に感じられるでしょう。
ただ地道な作業でも逆に楽しく感じられるのであれば、公認会計士として長く働けます。
責任感を持って仕事に取り組める人
また「責任感を持って仕事に取り組める人」にもおすすめです。
公認会計士は財務諸表などのチェックを通じて、企業がきちんと事業運営できているかに裏付けを与えます。
仕事を間違いなく行うだけでなく、間違っている点をきちんと指摘することも必要です。
逆に無責任で適当な仕事をしていると、企業は評判や信頼に傷が付くだけでなく存続の危機に直面する場合さえあります。
公認会計士はいわば企業の命運を担う存在でもあるため、責任感を持って仕事できる人にとって適職です。
数字やITスキルに自信のある人
さらに「数字やITスキルに自信のある人」にとっても向いています。
公認会計士は仕事の中で細かい数字に向き合ったり、PCを駆使したりする場面が非常に多いです。
忙しさに関係なく正確かつ迅速に業務を進めることが求められるため、数字やITに強い人材は重宝されます。
もし公認会計士を目指すのであれば、早めにPCスキルを身に付けたり複雑な数字に慣れたりすると良いでしょう。
会社経営に興味・関心がある人
会社経営に興味や関心のある人も公認会計士向きです。
公認会計士は財務諸表のチェックや指摘とともに、財務状況から企業経営に対して提案やコンサルティングも行います。
国内外の経済情勢や税制なども考慮した提案ができれば、なお信頼されるでしょう。
普段からまめに会社経営に強い関心を持ち、最新情報の収集にも熱心であれば公認会計士に向いています。
コミュニケーション力に自信のある人
最後にコミュニケーション力に自信のある人も公認会計士はおすすめです。
公認会計士として働く際、監査法人や企業の財務部の上司や同僚とチームで動くことが多くあります。
またクライアント企業の経営者や財務担当者との話し合いもごく日常です。
チーム内での打ち合わせやクライアントへの説明や質問も不可欠な業務であるため、しっかりコミュニケーションを取れることは重要と言えます。
時には財務諸表で見つかった間違いを指摘しなければならない場合もあるため、直言を辞さない覚悟も必要でしょう。
日頃から自分の意見をきちんと伝える癖も付けておくべきです。
公認会計士になるのをやめたほうがいい・後悔する方の6つの特徴
逆に公認会計士を目指さない方が良い人の特徴も気になるでしょう。
公認会計士に不向きな人の特徴は以下の6点です。
数字やお金に苦手意識がある人
まず数字やお金に苦手意識がある人は向いていません。
公認会計士は仕事の中で数字や金額と向き合うケースが非常に多いためです。
数字や金額を扱うのが苦手な場合、数字に慣れるところから始めるべきでしょう。
地味な作業に耐えられない人
また地味な作業に耐えられない人も不向きです。
公認会計士の仕事では財務諸表のチェックがメインであるため、地味な作業に多く従事しなければなりません。
目立たないものの企業の命運を左右する作業でもあるため、地味な作業に耐えられない人には難しいです。
派手な仕事で実績を残したい人には苦痛に感じます。
試験勉強のために十分な時間を確保できない人
試験勉強のために十分な時間を確保できない人には資格の取得が非常に難しいです。
公認会計士に合格するには3,000~5,000時間も費やします。
1日のうちでもまとまった時間を勉強に充てなければならないため、社会人には難しいでしょう。
実は公認会計士の合格者で最も多いのが20代の人です。しかも比較的時間に余裕がある学生や無職のうちに資格を取る人が大半を占めます。
1日の過ごし方を振り返り、まとまった時間が取れない場合は合格できません。
比較的年齢層が高い人
比較的年齢層が高い人にも公認会計士は不向きです。
確かに50代や60代の人でも合格者はいるものの、多くの時間を掛けて勉強しなければいけない点や出題範囲が非常に広さで苦労します。
膨大な期間を勉強に充てられる自信や決意がない場合は合格はかなり難しいです。
公認会計士に楽なイメージを持っている人
公認会計士に楽なイメージを持っている人も向いていません。
公認会計士を含めあらゆる仕事には楽なところも苦労するところもあります。
公認会計士を目指すのであれば、まず仕事の内容や労働環境を理解するところから始めるべきです。
いわゆるコミュ障な人
最後にコミュニケーションが苦手な人にも向いていません。
公認会計士は仕事の中で上司・同僚・クライアントの関係者などと話し合うことが非常に多いためです。
しかも単に話し合うだけでなく、業務に必要な情報を聞き出したり間違いを指摘したりすることも求められます。
コミュニケーション力が低い場合、公認会計士として円滑に仕事を進めるのは難しいでしょう。
公認会計士浪人の末路は厳しい|将来のキャリアに悪影響も
公認会計士は国内でトップクラスに難易度の高い資格であるため、人によっては数年かけて取得する人もいます。
何年もかけて受験勉強する公認会計士浪人の末路が気になる方もいますよね。
一方就職もしないで受験勉強ばかり続けていると、あっという間に年を取っていきます。
職歴が全くない場合、30歳を過ぎると就職が難しくなり、キャリアに悪影響を及ぼすでしょう。
公認会計士浪人になるにしても、30歳になる前に一度何らかの関連する職業に就いた方が賢明です。
幸い公認会計士試験に年齢制限はないため、生活を安定させてから勉強に取り組めます。
まとめ
「公認会計士はやめとけ」と言われる理由を、向いている人の特徴やメリットなどとともに見てきました。
試験の難易度が非常に高いことや人間関係で悩むことなど様々な理由で「やめとけ」と言われます。
しかし年収が非常に高い点や、働き方や仕事の幅を広げられるなど利点も様々です。また責任感が強い人や数字・ITに自信がある人などであれば大変おすすめでしょう。
公認会計士は資格取得にかなりの労力は必要になるものの、合格して働けば生涯にわたって高年収で活躍できます。
目指す際はやめとけと言われる理由とメリットを一緒に考えながら決めると良いでしょう。