臨床心理士として心のケアをしたい方もいますよね。一方で「臨床心理士はやめたほうがいい」と言われた経験はありませんか。
臨床心理士は心に問題を抱えた患者に寄り添い、必要なケアを行う専門職です。
社会的ニーズは高いものの、なぜネガティブな意見が多いのか気になりますよね。
本記事では臨床心理士はやめたほうがいいと言われる理由を、メリットや向いている人の特徴などとともに解説していきます。
臨床心理士とは|何をする仕事?
臨床心理士とは、心に問題を抱える方に寄り添い、専門的な知識を活かしたカウンセリングを通じて心の問題を解決する民間資格です。
病院やクリニックなどの医療機関だけでなく、学校や企業など様々な場所で活躍します。
近年ではストレスが原因で心の問題を抱える人が増加していることもあり、社会的な需要も高いです。
なお臨床心理士になるには、大学院で臨床心理学を学んだ上で試験に合格しなければなりません。
公認心理師との違いは?
臨床心理士と非常に似たものとして公認心理師もあります。
公認心理師とは、2017年から登場した心理系の国家資格です。一方臨床心理士はあくまでも民間資格の1つにすぎません。
基本的な業務も大きな違いはなく、専門知識を駆使して心に問題を抱える患者の助けになる点では同じです。
ただ公認心理師が国家資格である以上、今後臨床心理士以上に重要性のある存在として注目されるでしょう。
臨床心理士はやめたほうがいいと言われる5つの理由
臨床心理士になりたいと思うものの、ネットで「やめたほうがいい」という声に接することもありますよね。
臨床心理士に否定的な意見が多い理由に以下の5つがあります。
精神的なストレスで辛い思いをたくさんする
まず精神的なストレスで辛い思いをたくさんするためです。
臨床心理士は精神面で問題を抱えた患者に対応する中で、彼らの悲しみや辛さにさらされることも少なくありません。
患者が経験した辛い出来事の話を聞くうちに、悲しい思いをすることもよくあります。
また患者からの暴言や理不尽な振る舞いが原因で心が傷付くことも多いです。
患者対応の中でストレスを溜めたり嫌な気分になったりすることから、否定的なイメージを持たれることがあります。
業務量の割に平均年収が低い
また業務量の割に平均年収が低い点も理由の1つです。
臨床心理士の平均年収は350万円前後で、手取り換算では月収20~25万円となります。
先程見た精神的ストレスの大きさまで含めると、割に合わない仕事と言えるでしょう。
日々勉強も欠かせない
臨床心理士は日々の勉強が欠かせないのも大きな特徴です。
そして免許更新試験では最新の専門知識が問われるため、常に勉強が欠かせません。
ただでさえ勤務中の業務量やストレスで疲れ切っている中で勉強しなければいけないため、苦痛に感じる方もいます。
将来なくなるとも言われるから
臨床心理士が将来なくなると言われている点も否定的に考えられる理由です。
最初に見たように、国家資格である公認心理師が2017年に登場したことで、臨床心理士の将来を危ぶむ声も増えています。
公認心理師と臨床心理士は基本的に同じ業務に当たるものの、国家資格と民間資格では重みが全く別です。
今後公認心理師として業務に当たる方が増える一方、臨床心理士は減っていくとされています。
就職が難しいから
最後に臨床心理士の就職の難しさも「やめておいた方がいい」と言われる要因です。
臨床心理士など心理関係の職業は非常に人気が高い一方、病院などでの求人は増えていません。
競争率が非常に高いため、大学院を出ていても就職には高いハードルが伴います。
正社員以外の求人にも目を向けたり、在学中に教授の伝手を頼ったりすることも必要でしょう。
臨床心理士を辞めた方の退職理由を4つ紹介
臨床心理士を目指さない方が良いのかを判断する際、経験者の退職理由も有益な材料です。
よく見られる臨床心理士の退職理由に以下の4つがあります。
専門業務以外の雑務も多いから
まず専門業務以外に雑務がある点です。臨床心理士は患者の対応やカウンセリングなどのほかに、面接記録・初見レポートなどの資料作成や調査研究を行います。
加えて務めている医療機関内での調整・会議や職員採用といった業務も多いです。
さらに勤務時間外には常に最新の知見も取り入れなければいけないため、日常的に多忙を極めます。
あまりにも忙しすぎるため、心身共に疲弊して辞める方も多いです。
満足できる給料を貰えなかったから
また給料への不満が原因で辞める方もいます。臨床心理士の平均年収は350万円前後ですが、上記のような多忙さの割に非常に少なめです。
しかも患者対応での精神的なストレスも大きいため、より給料に対する満足感を感じられません。
待遇の良い職場や職種を求めて辞める方も多くいます。
自分の心の傷と向き合うことが多いから
自分の心の傷と向き合うことが多いのも、辞めがちな理由の1つです。
ただ患者の話の中には過去に受けた虐待・ハラスメント・暴力など、目を背けたくなるものも多いです。
特に過去に辛い経験をしてきた臨床心理士にとっては心をえぐられることもあるでしょう。
過去の傷を思い出して、仕事を続けられなくなる臨床心理士もいます。
非常勤の場合は産休さえ取れないから
非常勤の臨床心理士にとっては産休さえ取れないことも辞める理由です。非常勤の場合は正規職員と異なり、雇用の立場が安定していません。
そして非常勤の場合は雇用期間が決まっているため、産休を取ってすぐ復帰できなければ退職を迫られます。
退職後に仕事を探す手間が掛かる分、産休に後ろ向きになりがちです。
安心して出産や子育てができない環境も退職の原因に数えられます。
臨床心理士の持つ3つのメリット
「やめたほうがいい」と言われる臨床心理士にもメリットがあると聞けば、つい知りたくなりますよね。
主なメリットが以下の3点です。
精神的な問題を抱えた人の役に立てる
臨床心理士は何よりも精神的な問題を抱えた人の役に立てます。
心に傷を持っていたり悩んでいたりする患者に寄り添うため、彼らが元気になった姿は何よりも嬉しく感じられるものです。
加えて問題を克服した時に感謝の言葉を掛けられると、力になれたことや仕事を続けてきたことへの喜びに浸れます。
患者の感謝の言葉を糧に、また仕事に打ち込める点も臨床心理士のやりがいです。
幅広い業務を通じて成長できる
また幅広い業務を通じて成長できるメリットもあります。
臨床心理士の業務はカウンセリングだけでなく、調査研究や地域への援助などと幅広いです。
業務を通じて成長すれば、キャリアアップや専門性を活かした幅広い働き方にも対応しやすいです。
幅広い働き方ができる
臨床心理士は幅広い働き方も可能です。病院などの医療機関で働くだけでなく、スクールカウンセラーや産業医として働くこともできます。
実務経験や知識が増したら独立してフリーランスになったり、養成機関の講師として教鞭を取ったりすることもできます。
1つの職場にこだわらず複数の職場を掛け持ちすれば、収入も増やせるでしょう。
臨床心理士に向いている人の6つの特徴
臨床心理士を目指す際、自分が向いているのか気になりますよね。
臨床心理士に向いている人の特徴は以下の6つです。
他人への貢献が楽しいと思える人
まず他人に貢献することを楽しく感じられる人が向いています。
臨床心理士は心の問題を抱えた患者に親身になるため、人のために役立つ気持ちが強くないと続けられません。
患者に尽くす職業であるからこそ、患者が立ち直った時の喜びは非常に大きいです。
普段から「誰かの役に立ちたい」「人を喜ばせたい」という思いが強ければ臨床心理士に向いているでしょう。
切り替えが早い人
また切り替えが早い人もおすすめです。臨床心理士は患者の話を聞く中で辛い気持ちになることも少なくありません。
ただ患者の悲しい気持ちを受け止めた時に落ち込んでいては、後の仕事にも支障が出ます。
適度に患者に共感しつつ、仕事の中でうまく切り替えできる人であれば続けていけるでしょう。
コミュニケーション力の高い人
臨床心理士はコミュニケーション力の高い人にもおすすめです。業務中は患者や家族だけでなく、勤務先の関連するスタッフとの連携も欠かせません。
連携する中で専門知識に基づいた提案をするためにもコミュニケーション力は必要です。
聞き上手な人
聞き上手な人も臨床心理士に向いています。患者の問題に対応するには辛抱強く彼らの思いを受け止めなければなりません。
そして臨床心理士はひたすら話を聞く姿勢が求められます。
そして傾聴する姿勢が治療の第一歩になるため、聞き上手であることは非常に重要と言えます。
過去にたくさん辛い思いをしてきた人
過去にたくさん辛い思いをしてきた人も臨床心理士はおすすめの職業です。
日常的に心の傷ついた患者に寄り添うには、臨床心理士の側が彼らの辛い気持ちを受け止めなければなりません。
過去の痛みを気に臨床心理士を目指すのも1つの選択です。
勉強熱心な人
最後に勉強熱心な方も向いています。
加えて臨床心理士は5年に1度資格免許の更新が行われます。審査に合格しなければ続けて患者のために働けないため、勉強は不可欠です。
今の自分に満足せず引き続き勉強を欠かさない人であれば、臨床心理士はおすすめの職業でしょう。
臨床心理士はやめた方がいい・後悔する人の5つの特徴
逆に臨床心理士にならない方が良い人の特徴が気になる方もいますよね。主に以下の5タイプです。
相手に耳を傾けるのが苦手な人
まず相手に耳を傾けるのが苦手な場合は向いていません。臨床心理士は日常的に患者の話に耳を傾けることも重要であるためです。
最初のうちは相手が話しやすいように臨床心理士の方から語り掛けることも必要になります。
ただ患者が話し出した段階でもしゃべっていばかりでは、かえって治療の妨げになるでしょう。
相手の話に真剣に向き合えない場合、うまく仕事がしにくいです。
他人の心に寄り添えない人
また他人の心に寄り添えない人も臨床心理士には向いていません。
しかし相手の心を無視して色々とアドバイスしたり説教したりすると、患者はかえって傷ついてしまいます。
最悪の場合、最初の頃よりも深刻な状況になりかねません。
高年収を目指したい人
臨床心理士を通じて高年収を目指したい人も不向きです。
臨床心理士の平均年収は350万円程度のため、普通に仕事するだけでは高年収は期待できません。
しかも医療職でもあるため、給料がなかなか伸びないという現実もあります。
もし臨床心理士として少しでも収入を増やしたい場合、転職や副業といった対策が必要になるでしょう。
個人情報を守れない人
臨床心理士は患者や家族の個人情報を扱う機会が多いです。もし個人情報を守れない場合、臨床心理士として働くことは困難でしょう。
仮に友達などに診療している患者の個人情報を話すと、後から大きな問題に発展しかねません。
臨床心理士として働く場合、個人情報は絶対に守る姿勢も不可欠です。
臨床心理士試験に何度も落ちている人
最後に臨床心理士試験に何度も落ちている人は諦めた方が良いでしょう。
一方何度も受験しているのに合格できないということは、勉強に本気になれていないことを意味するでしょう。
実際の業務は試験以上に大変であるため、3回落ちるようであれば不向きです。
臨床心理士に将来性はある?
臨床心理士を目指す際、将来性も気になりますよね。最後に臨床心理士の将来性も見ていきましょう。
心の問題に悩む人の増加で需要は高い
現代はストレス社会ということもあり、心の問題に悩む人が多い時代です。
今後も心の問題に悩む人が増加する見込みである分、臨床心理士の需要もますます高まるでしょう。
厚生労働省の調査では、メンタルの不調が原因で1ヶ月以上休業する労働者は年を追うごとに増加しています。
ストレス社会が続く限り、心の調子を崩す人も増える分、臨床心理士への期待度も高いです。
AIに代替されることはない
最近では単純労働を中心にAIが進出してきているため、将来的に多くの仕事が取って代わられると言われています。
ただ臨床心理士については人と直接関わるため、AIに代替されません。
AIは人の心に関する作業が苦手分野です。他方臨床心理士は人の心に専門知識を駆使して関わるため、今後とも人が直接携わるでしょう。
公認心理師と比べてどっちがいいのか?
臨床心理士の将来を考える上で避けられないのが公認心理師との関係です。公認心理師は心理職唯一の国家資格で、2017年に登場しました。
臨床心理士が民間資格である一方、公認心理師は国家資格であるため、今後は公認心理師の方が重要視されるでしょう。
将来的には公認心理師の取得もおすすめです。
まとめ
臨床心理士はやめたほうがいいと言われる理由を、メリットや向いている人の特徴とともに見てきました。
給料の低さやストレスの溜まりやすさなどが、ネガティブに見られる主な要因です。
ただ臨床心理士は心に問題を抱えた患者の力になれるとともに、患者が元気になればやりがいを感じられます。
将来性の面でもAIに取って代わられないだけでなく、心の問題を抱える患者の増加でニーズが高いです。
もし臨床心理士を目指すのであれば、やめたほうがいいとされる理由とメリットなどを合わせて検討すると良いでしょう。