視覚に何らかの問題がある方の力になりたいと、視能訓練士を目指す方もいますよね。
しかし視能訓練士について調べると、「やめとけ」というワードが気になる方も多いはず。
視能訓練士はメリットもデメリットも両方あります。ただメリットや魅力のような良い部分に加えてデメリットも知ることで、目指すべきかについて判断する上で役立ちます。
そこで本記事では「視能訓練士はやめとけ」と言われる理由から、メリットや将来性まで解説していきます。
視能訓練士とは
視能訓練士とは、目の機能に何らかの障害がある方をサポートする専門家です。
具体的には弱視・斜視・近視・遠視などの目に関係する症状を検査し、必要な訓練を通じて障害を克服する手助けをします。
サポートの対象も小児から高齢者と非常に幅広いです。また病院の眼科や眼下専門医院のほか、福祉施設・介護施設・学校の定期健診など様々な場所で活躍します。
近年ではITやインターネットの発達でスマホやPCを使う人が激増する一方、眼下関係の疾患で悩む方も多いです。
ITがごく身近な存在になってきている分、視能訓練士の需要も増しています。
視能訓練士はやめとけと言われる7つの理由
幅広い年齢層の患者を相手にしたり様々な場所で活躍したりできる視能訓練士ですが、一方で「就職するのはやめとけ」と主張する人も声もあります。
「視能訓練士はやめとけ」と言われる主な理由を7つ解説していきます。
社会的に認知度が低いから
まず視能訓練士は医療関係の職業でも非常に認知度が低いです。
IT社会の中で需要が増しているにもかかわらず、テレビや新聞でもあまり取り上げられません。あまりにも知名度が低いため、家族や友人に説明する際も大変です。
認知度の低さから、「職業自体が世間から必要とされていないのではないか」と勘ぐってしまうことがあるでしょう。
【就職できないことも】求人の幅が狭いから
また視能訓練士は求人の幅が狭い点からもネガティブに取られがちです。
視能訓練士の主な就職先として、病院の眼科や眼科専門の医療機関が挙げられます。
福祉士悦や介護施設で活躍できる場合もあるものの、医療機関に比べると求人数がずっと少ないです。
選べる幅があまりにも狭いため、せっかく国家資格を得ても厳しい求人競争にさらされます。
人によっては運悪く就職できない場合もあるため、「やめとけ」と言われやすいです。
女社会であるために男性は苦労するから
さらに現場で活躍する視能訓練士のほとんどが女性という点も理由に挙げられます。
全体の8割以上が女性の訓練士であるため、職場の空気も自然と女性の世界です。特に男性で視能訓練士を目指す場合、女性ばかりの職場で孤立する場合もあります。
そのため、女性の多い職場でも働いていけるかどうか、自分の適正をしっかり見極めるようにしましょう。
上下関係も厳しいから
視能訓練士の職場は上下関係も厳しいです。
視能訓練士の世界は年功序列であるため、キャリアの浅いスタッフは上司や先輩に気を遣う必要があります。
特に相性の良くない訓練士が目上の立場の場合、理不尽な理由で厳しく指導されることも多いです。
納得できない理由による指導や説教が続くと、ストレスが溜まって長く働くのも大変に感じます。
給料が低いから
視能訓練士の給料が低い点も「やめとけ」と言われる理由の1つです。
厚生労働省の令和3年賃金構造基本統計調査によると、視能訓練士の平均年収は約427万円と算出されています。
国内民間企業の平均年収は約443万円(国税庁令和3年民間給与実態統計調査より)です。
一般の会社員よりも安い一方、視覚に問題のある患者のケアや訓練で忙しいため、割に合わないと感じる方もいます。
患者との人間関係でも悩むから
視能訓練士は同僚や目上の人とだけでなく、患者との人間関係に悩むことも多いです。
患者の中にも不機嫌な人や情緒不安定な人もおり、時に暴言や暴力に遭うこともあります。
視能訓練士はただでさえ職場内の悩みを被りやすい立場です。職場内に加えて患者との関係で苦しむと、なおさらストレスに感じて辞めたい気持ちが強まります。
そのため、相手に対して真摯に向き合う強さが求められます。
離職率が高いから
最後に離職率の高さも理由です。公益社団法人日本視能訓練士協会が公表した勤務先変更(転職)の調査結果によると、訓練士の6割が転職を経験しています。
人間関係の悩みや待遇の悪さを転職理由に挙げる訓練士が多いです。
離職率が高い場合、配属された職場で人手不足に悩むだけでなく、長く続けられるか不安を感じやすいです。
視能訓練士を辞めた方の退職理由を4つ紹介
視能訓練士を目指すか諦めるか考える際、実際に辞めた方の声は非常に役に立ちます。
視能訓練士の退職理由でよくあるのが以下の4つです。
職場での人間関係に悩んだから
まず職場の人間関係の悩みが挙げられます。
視能訓練士の活躍する現場では上下関係が厳しいため、上司や先輩からミスを指摘されたり、きつい指導を受ける場合も多いです。
特に慣れないうちに厳しい指導を受け続けていると、次第にメンタルが疲れ切ります。
上司や先輩が理不尽な理由で辛く当たる場合、辞めたい気持ちも強くなります。
加えて男性の訓練士の場合、女性の多い職場の空気が嫌になって辞めるケースもあります。
同性の訓練士が少ないと相談できる人もいないため、辞めたい気持ちに襲われやすいです。
給料が低いから
また給料の低さを理由に辞めた方もいます。視能訓練士は患者のカウンセリングや訓練のほかにも、こなすべき雑務が多いです。
にもかかわらず、視能訓練士の平均年収は約427万円で、普通の会社員の平均より多くありません。
給料が業務量に見合わない上に、現場で患者との人間関係でやきもきさせられるため、不満を感じることもあります。
自分のスキルに自信を失くしたから
さらに自分のスキルに自信がを失くして辞めた方もいます。
視能訓練士として働いていると、上司や先輩からきつい指摘を受けたり、検査や訓練がうまく進まなかったりすることも多いです。
特に生真面目な訓練士の場合、指摘されたことや自身の至らなさで苦しみ辞めてしまうケースもあります。
中には退職後に全く別の業種・職種に再就職する方もいるほどです。
やりたい検査ができなかったから
最後にやりたい検査ができなくて辞めた方もいます。
せっかく国家資格を得て就職できても、職場によっては精密な機器を置いていない場合も多いです。
また子供や高齢者など自分が特にサポートしたい患者があまり来ないために、職場環境を変えるべく辞める方もいます。
視能訓練士は求人の幅が狭いため、自分のしたい検査ができない場合にも直面しやすいです。
事前に下調べしていても自分が関わりたい検査ができるところがないため、意に沿わない職場に就職することもあります。
やりたい検査ができるとは限らない点は、視能訓練士の世界全体の問題と言えます。
視能訓練士の持つ6つのメリット
視能訓練士にはデメリットややめるべき理由も色々とある一方、メリットや魅力も多いです。
視能訓練士の主なメリットに以下の6点が挙げられます。
訓練を通じてやりがいを感じられる
まず患者の訓練を通じてやりがいを感じられる点です。
視能訓練士は視覚に問題や不便を感じている患者を専門知識でサポートします。
訓練を通じて患者の眼の状態が良くなれば、不便なく見える喜びを伝えられることも多いです。
加えて訓練を終えた際に感謝の言葉を貰えれば、専門家として力になれたことに喜びや安心感も感じられます。
やりがいを感じられれば、改めて次の担当患者の力になろうと思いを新たに仕事ができます。
資格取得の難易度は非常に低い
また視能訓練士は視覚取得の難易度も非常に低いです。
視能訓練士の国家試験は毎年1度行われていますが、合格率は国家試験の中でも非常に高い9割以上を誇ります。
もちろん大学や専門学校などで専門的な知識やスキルを体得する努力は欠かせません。
しかし合格率の高さから見て、真面目に勉強や訓練などに取り組んでいれば資格を得やすいと言えます。
特に強い思いを持って視能訓練士を目指す方にとっては、非常に希望の湧くポイントです。
夜勤や土日出勤がない
さらに視能訓練士は基本的に夜勤や土日出勤がありません。
視能訓練士が検査や訓練を行うのは、患者が訪れる日中のみです。
閉院時間後に雑務をこなすために残業が発生する場合はあります。
ただ医師や看護師のような深夜時間帯や土日の当直がない分、プライベートを楽しんだり家族と一緒に過ごしたりしやすいです。
女性にとって働きやすい
視能訓練士は多くが女性である分、女性には働きやすいと言えます。
良くも悪くも女性の社会ではあるものの、女性訓練士からすると同性の訓練士同士で連携しやすいです。
加えて女性訓練士が多いこともあり、結婚や出産などのライフイベントの際は同僚にも気軽に相談できます。
子供に接する機会も多い分、子育ての経験をうまく活用できる点も強みです。
様々な働き方ができる
視能訓練士は様々な働き方ができます。
正規職員として1つの病院やクリニックで働くだけでなく、終業後に別の病院で副業したり他の職場に転職したりするのもありです。
特に他の病院で働くほど、様々な検査に携わり、数多くの症例に触れることができます。
結果的に視能訓練士としてのスキルや経験を積み増すため、副業や転職もおすすめです。
正規職員以外の選択肢で働くことで、自分自身のキャリアを向上させることができますよ。
将来的に需要が高い
視能訓練士は将来的な需要の高さもポイントです。視能訓練士が専門とする目の疾患に悩む患者は現在急増しています。
IT社会の進展やスマホの発達などで、誰もが日常的にデジタル機器を利用しているためです。
ただ長時間スマホなどを利用している分、ブルーライトの影響で目の疲れを感じる方も増えています。
目の疲れの悪化は近視や乱視などの原因です。今後もデジタル機器を使う機会が増す見込みである分、視能訓練士の活躍も期待されています。
視能訓練士に向いている人の6つの特徴
視能訓練士として患者のサポートに携わりたいと思う一方、適性があるのか心配になりますよね。
次に視能訓練士に向いている方の特徴を6つ紹介します。
視覚関係で問題を抱えている患者の力になりたい人
まず視覚関係で問題を抱えている患者の力になりたい人は視能訓練士におすすめです。
視能訓練士として活躍する場合、目の疾患に悩む患者に寄り添う姿勢が欠かせません。
検査や訓練も患者と二人三脚で取り組みます。患者をサポートすることで回復を実現したい気持ちを持っていれば、困難にぶつかっても乗り越えられるでしょう。
なお過去に視覚関係の疾患に悩んだ方にもおすすめです。視覚関係の悩みで苦しんだ経験がある分、人一倍患者のサポートに情熱を注げます。
ストレス耐性のある人
またストレス耐性がある人も視能訓練士向きです。
視能訓練士を含む医療の現場は半端な仕事をするわけにはいかないので、仕事に慣れないうちは厳しく教えられることもあります。
また患者の検査や訓練についても、患者との関係がうまくいかないことや治療が滞ることもよくあります。
次の項目のコミュニケーションにも繋がる話ですが、人と関わる分、上手くいかないことがあるとストレスが溜まりやすい仕事です。
そのため、ある程度気持ちを切り替えられる人や、ストレス耐性がある方は向いていると言えます。
コミュニケーション力の高い人
さらにコミュニケーション力が高い人も適性があります。
視能訓練士は患者の治療や訓練でコミュニケーションが必要不可欠です。患者の思いに寄り添ったり、彼らのニーズに合わせたりすることで適切な訓練を行えます。
また同じ訓練士や医師など他の医療職との連携も重要です。
患者の課題を克服するためにも、必要に応じてチーム内で専門家として提案したり医師に報告したりしなければなりません。
高いコミュニケーション力を持っていれば、視能訓練士として存分に活躍できます。
子供好きな人
子どもが好きな人も視能訓練士の適性が高いです。
目の病気が原因で生活に不便を感じる子供も大勢います。一方子供に検査や訓練を行う際、子供でも分かりやすい言葉で話しかけなければいけません。
子どもに接するのが好きな人は子供の気持ちに敏感です。検査や訓練を受ける子供の感情に寄り添えれば、子供が目の疾患を克服する上で非常に役に立ちます。
なお子育て経験がある訓練士も子供の気持ちを理解できる分、現場で活躍しやすいです。
安定した給料を稼ぎたい人
視能訓練士は安定した給料を稼ぎたい人にも向いています。視能訓練士の給料がなかなか伸びない事業所も多いです。
ただし給料が伸びにくい一方で、給料が劇的に下がるケースもめったにありません。
あまり高望みすることなく、長期的に決まった金額を受け取りたい安定志向の方であればおすすめです。
ただしスキルやキャリアが向上すれば、ある程度の昇給も期待できます。
腰を据えて訓練を行える人
最後に腰を据えて訓練を行える人も視能訓練士向きです。
患者の訓練は常にスムーズに進むとは限りません。むしろ患者の精神状態によってはなかなか先に進めない場合もあります。
訓練が進まない場合に視能訓練士に求められるのが、焦らないスタンスです。
患者とじっくり向き合いながらちょっとずつ必要なケアや訓練を行う姿勢が欠かせません。
長い時間が掛かってもじっくり訓練を行う覚悟があれば、視能訓練士として専門性を発揮できます。
視能訓練士を目指すと後悔する人の4つの特徴
逆に視能訓練士に向いていない人の特徴も気になりますよね。
視能訓練士を目指すとかえって後悔する人の特徴は以下の4つです。
コミュニケーションが苦手な人
まずコミュニケーションが苦手な場合、視能訓練士として苦労します。
コミュニケーションに自信がない場合、患者のニーズや思いを汲み取れないため、患者に寄り添うことも難しいです。
加えて検査や訓練も同僚や他の医療職との協力で行うため、適切なコミュニケーションによる連携が欠かせません。
コミュニケーションがうまく取れない場合、業務に支障が出るので、視能訓練士の仕事は非常に厳しいと言えます。
高年収を狙っている人
また高年収を狙っている人も不向きです。視能訓練士の平均年収は約427万円である上に、大きな昇給もあまり期待できません。
スキルアップやキャリアアップでようやくある程度の昇給はできるものの、劇的に給料が上がることはないと思っておきましょう。
視能訓練士を通じて大きく出世することは現実味がないため、諦めるべきです。
すぐ結果を求める人
すぐ結果を求める人も視能訓練士になると苦労します。視能訓練士が患者に対して行う訓練が成果を出すには、長い時間が必要です。
しかも患者は目の機能が低下しているため、思い通りの成果が出ないこともよくあります。
成果が出ないことにいら立って患者を焦らせると、患者との関係が悪化する可能性もあります。
患者との良好な関係は訓練を進める上で重要であるため、すぐ結果を求めがちな人には視能訓練士は務まりません。
上下関係が苦手な人
最後に上下関係が苦手な人も視能訓練士は大変な職種です。
視能訓練士の職場は年功序列が根付いている分、上司や先輩への気遣いが求められます。
たとえ上司や先輩の指導が厳しく理不尽なものであっても、ある程度は許容しないと長続きしません。
上司や先輩に反発しやすい人や上下関係抜きに仕事したい人にとって視能訓練士は難しいです。
視能訓練士の将来性は?年収500万円は目指せる?
視能訓練士として働きたい気持ちが強い場合、将来性も気になりますよね。
以下の3点から視能訓練士の将来性について見ていきましょう。
高齢化やITの進歩で需要が増す予想
まず高齢化やITの進歩で需要が増していくことが予想されます。
現在の日本では高齢化が進んできており、今後とも人口に対する高齢者の比率が増すことは確実です。
高齢者の場合、加齢によって視力が衰え、視覚関係の疾患にかかる場合があります。
視力の衰えだけでも日常生活で不便をきたすため、視力回復に活躍できる視能訓練士の需要が増える可能性があります。
加えて近年ではITの進歩によって、かなり多くの方がPCやスマホを使っています。
ただスマホなどの使い過ぎで視力が衰える人も増えているため、やはり視能訓練士への期待は大きいです。
AIやロボットに代替されにくい
視能訓練士の将来性を考える際、AIやロボットに代替されないか心配ですよね。実は視能訓練士はAIなどに取って代わられるリスクは低いです。
確かにAIやロボットが発達すれば、訓練に必要な検査は訓練士が担当しなくなる可能性はあります。
しかし患者とのコミュニケーションや彼らの思いに寄り添うことは訓練士でなければできません。
心に関する部分はAIやロボットが不得意な分野です。AIなどが発達しても視能訓練士が活躍できる余地は十分に残されます。
スキルアップや複業などで年収も増やせる
最後に視能訓練士は、スキルアップや複業などを通じて年収を増やせる点も魅力です。
平均年収の低さや昇給の小ささが目立つものの、専門性や経験が増すことで待遇も改善されます。
スキルが向上すれば役職にも就ける分、役職手当が発生するでしょう。
加えて資格を取得すれば重宝される分、給料も増えやすいです。事業所や年代によって500万円を突破できる場合もあります。
また視能訓練士は比較的副業ができる職業です。本業以外に類似の仕事を掛け持ちすることで収入や経験を増やせます。
まとめ
「視能訓練士はやめとけ」と言われる理由を、メリットや将来性と合わせて解説しました。
視能訓練士は目の病気に対する専門家であるものの、給料の低さや上下関係の厳しさなどからネガティブに見られやすいです。
しかし視覚関係の悩みを持つ患者の力になったり、夜勤や休日出勤がなかったりする点など魅力も多いです。
加えて高齢化やITの進歩で需要が増すとされている分、将来性も大いに期待できます。
視能訓練士は知名度こそ低いものの、今後大きく注目されることが予想される職種です。
目指す際はメリット・デメリットの両方を知った上で判断してください。