発明などの特許を出願する弁理士として稼ぎたい人もいますよね。しかし弁理士については「やめとけ」と言われがちです。
弁理士は難しい資格としても有名です。目指す際に「やめとけ」とされる理由も知ると、最終的に目指すか決められます。
本記事では「弁理士はやめとけ」と言われる理由を、弁理士のメリットや特許事務所の選び方なども交えて解説します。
弁理士とは
弁理士とは、特許や商標などの知的財産に関する手続きを行う専門職です。
弁理士は知的財産関係では最高ランクの資格であるため、合格率が5~6%程度と非常に低いです。
ただし難易度が高い上に知的財産関係の手続きを独占業務としているため、平均年収は945万円に及びます。
弁理士として働く場合、特許事務所の一員として働くケースが多いです。
一方企業の知財部員や個人事業主として働く人もいて、工夫次第で年収が1,000万円を超える場合があります。
弁理士はやめとけと言われる7つの理由
弁理士について調べると「やめとけ」というワードをよく目にしますよね。
弁理士が「やめとけ」と言われがちな理由は以下の8つです。
- 弁理士が増えてきたから
- 現実に高年収を稼げるとは限らないから
- 資格取得の難易度が非常に高いから
- ブラックな特許事務所もあるから
- ノルマなどのプレッシャーがきついから
- 稼げるまでに時間が掛かるから
- 登録を抹消する人が激増したため
弁理士が増えてきたから
まず弁理士が増えてきた事情が挙げられます。弁理士は難易度が高い試験ではあるものの、近年では着実に合格者・登録者が増えている状況です。
ただ弁理士が増えることは、逆に求人を巡る競争が激しくなることを意味します。
今後も弁理士は増える見込みであるため、競争はより激化するでしょう。
現実に高年収を稼げるとは限らないから
また弁理士全員が高年収を稼いでいるとは限らない点も理由です。確かに弁理士の平均年収は945万円を記録しています。
特に勤務先が原因の場合、資格を得た後に就職先を誤ると逆に稼げなくなるでしょう。
求人を見極める目も求められるため、「やめとけ」と言う人もいます。
資格取得の難易度が非常に高いから
資格取得の難易度の高さを理由に弁理士を諦めるように勧める人も多いです。
弁理士は知的財産関係の国家資格では最高峰であるため、合格率も5~6%程度とかなり低くなっています。
毎日まとまった時間を勉強に充てられる人でなければ合格が難しいため、特にすでに社会人として働いている人にはきつく感じるでしょう。
ブラックな特許事務所もあるから
弁理士の主な勤務先である特許事務所にブラックなところがあるのも、「やめとけ」と言われる理由です。ブラックな特許事務所には以下の特徴があります。
- 長時間労働やサービス残業が日常茶飯事
- きついノルマがある
- 弁理士とは思えないほど給料が低い
- パワハラなどハラスメントが横行している
以上のような特徴を持つ特許事務所で働くと、良いように酷使された上に心身ともに疲れ切ってしまうでしょう。あまりの過酷さに数ヶ月で辞めてしまう人までいるほどです。
ただ弁理士の働き方は成果主義の要素が強い背景もあります。なるべく実績を残そうとして長時間労働にまい進する弁理士や事務所が一定数存在することも原因と言えるでしょう。
ノルマなどのプレッシャーがきついから
ノルマなどのプレッシャーがきついところも「やめとけ」と言われる点です。弁理士は基本的に担当の案件を1人でこなします。
ただ1人で出願などの全責任を負うため、精神的なプレッシャーは計り知れません。
しかも限られた時間の中で色々な業務を進めなければいけないため、肉体的にも追い込まれます。
他にも厳しいノルマがあるおかげで担当すべき案件がたくさんあることも原因です。
心身ともに追い込まれて疲れ切ってしまうため、「やめとけ」と言う人もいます。
稼げるまでに時間が掛かるから
稼げるまで時間がかかる点も理由の1つです。弁理士は一般の会社員に比べればかなり稼げるものの、最初から大きく稼げるわけではありません。
弁理士は資格取得後も、特許事務所で最低でも2~3年程度の下積みが必要とされています。
実際には5年以上掛かる人も非常に多いです。1人前になってようやく何百万円もの年収を稼げます。
ただでさえ合格が大変な弁理士の資格を得ても、まだまだ修行期間や苦痛が続くことから「やめとけ」とよく言われやすいです。
登録を抹消する人が激増したため
最後に近年では弁理士の登録を抹消する人が激増している事情もあります。実は弁理士業務を行う際、資格が必要なのは特許事務所に入る場合のみです。
実際特許事務所で働く以外にも企業の専門部署(知財部など)に所属すれば、わざわざ資格を取る手間も掛かりません。
しかも資格を保つには地元の弁理士会に毎年会費を払う必要があります。
弁理士登録者の減少が「弁理士では食えない」「弁理士はオワコン」のイメージに繋がったことから、「弁理士はやめとけ」という声も大きいです。
弁理士を辞めた方の退職理由を4つ紹介
弁理士を目指すか考える際、実際に辞めた人の退職理由も知りたいですよね。弁理士でよくある退職理由が以下の4つです。
仕事量が非常に多いから
まず仕事量が非常に多いことがよく挙げられます。弁理士は1人で様々な案件をこなすのが一般的です。
ただ特許事務所によってはコストを削減するために、1人当たりの案件を増やしたり人員を削減したりします。
担当案件が増えると仕事量が増えて疲れやすいです。仕事量と給料のバランスが悪ければ、士気も下がるでしょう。
あまりの仕事量の多さに耐えきれなくなって弁理士を辞める方もいます。
労働時間が長いから
また労働時間の長さも退職理由に多いです。受け持つ仕事量が増えれば増えるほど、当然ながら労働時間も長引きます。
労働時間が長引く場合、長時間の残業にも繋がりやすいです。じっくり休息を取ったりプライベートを楽しんだりすることができないため、退職を考え始めます。
成長できる教育環境が整っていないため
成長できる教育環境が整っていない点も退職理由でよくあるものです。弁理士は実務経験を積んだりスキルを磨いたりするほど、大きく成長するとともに多くの年収を稼げます。
ただ特許事務所によっては新人の教育体制が不十分だったり、指導できる人員に余裕がなかったりすることも多いです。
しっかり指導されないままに案件を受けると、フォローの足りなさに不満を感じてしまいます。
上司や先輩などがしっかりフォローしてくれなければ、先々勤めていけるのか不安を抱きやすいです。
しまいにはもっと教育体制が整っているところに移ろうと転職する人もいます。
事務所の仕事量が少ないため
事務所の仕事量が少ないことも辞めるきっかけでよくあるものです。弁理士は出来高制であるため、数をこなした分だけ高い給料を貰えます。
ただ事務所の知名度が低かったり規模が小さかったりする場合、案件の受注量も多くありません。
多く稼いだり成長できたりする機会に恵まれないため、先々に見切りをつけて辞めようとします。
弁理士の持つ5つのメリット
弁理士になるか考える際、やめるべき理由や退職理由以外にメリットも知りたいでしょう。
弁理士のメリットは以下の5つです。
一般の会社員より年収が高い
まず一般の会社員に比べて高い給料を貰えます。弁理士の平均年収は945万円で、一般の会社員の平均である443万円の倍以上です。
経験やスキルを積んだりクライアントから信用を得たりしたベテランほど高い年収を稼いでいます。
出来高制で収入を増やせるため、適度に仕事を増やせれば健康を害することなく高年収を稼げるでしょう。
オワコンや食いっぱぐれにはならない
またオワコンや食いっぱぐれにならないのも弁理士の強みです。
しかも特許出願の案件は企業の経済活動が続く限りは生まれます。
特許事務所や企業の知財部の求人で満足できるものがあれば、将来的に長く食っていけるのも魅力です。
世界的に見て案件数は増加している
世界的に案件が増えている点も弁理士のメリットと言えます。
世界全体でビジネスが活発になっているため、企業の中にも世界経済を視野に入れて特許出願するところも多いです。
中でも複数の国で特許を取るPCT国際出願もグローバル企業の台頭で増加しています。特許の専門知識に加えて語学力が高ければ、世界を舞台に思い切り活躍できるでしょう。
独立開業や副業など様々な働き方ができる
弁理士は独立開業や副業など様々な働き方ができるのもメリットです。リモートワークや時短勤務など様々な働き方に寛容な特許事務所もたくさんあります。
またフレックスタイム制を導入しているところもあるため、育児や介護と両立しながら仕事できるケースも多いです。
給料が高く設定されているため、正規職員にこだわらなくてもアルバイトやパートで働くのも良いでしょう。
なお自身で開業した場合、クライアントとの繋がりや営業力を活かせば年収1,000万円以上も夢ではありません。
研究開発で培った知識が役に立つ
弁理士は研究開発で培った知識が役立つ点も強みです。弁理士が特許出願する際、出願したい技術について書類の中でかなり具体的に説明しなければなりません。
ただ出願予定の技術について自分の専門に関係していれば、非常に高度かつ説得力のある専門知識を反映できます。
深い専門知識を明細書に盛り込んで出願すれば、比較的特許が下りやすくなるでしょう。
弁理士に向いている人の5つの特徴
弁理士を目指す際、自分に適性があるのか気になりますよね。弁理士に向いている人の特徴は以下の5つです。
情報収集能力の高い人
まず情報収集能力が高い人は弁理士に向いています。弁理士が企業の依頼で特許出願を行う際、様々な方面から最新の情報を収集しなければなりません。
日頃から多様な情報を集めることや人の話を上手に聞くことに長けていれば、十分素質があるでしょう。
論理的な文章が書ける人
また論理的な文章を書ける人も弁理士向きです。弁理士が特許出願を行う際、特許庁の職員を納得させられるように技術や発明について説明できる必要があります。
通知が送られた場合はきちんとした説明ができれば、改めて特許権の獲得に向けて審査されます。
一方説明の内容に筋が通っていない場合、特許は下りません。せっかく出願したものをしっかり活かすためにも、論理的な文章を書く力を持つ人は重宝されます。
英語や中国語が堪能な人
英語や中国語が堪能な人も弁理士向きです。近年特許出願の案件は海外のものを中心に増えています。
海外の国で特許権を得るには語学力を活かした論理的な説明は欠かせません。
特に欧米や中国向けに出願する件数が大きく増えています。英語や中国語を使って出願する機会が多いため、両方をうまく使いこなせれば弁理士として長く働けるでしょう。
聞き上手な人
聞き上手な人も弁理士として活躍できます。特許出願の際、クライアント企業や発明者と話しながら情報集めしなければいけません。
企業や発明者から得た情報が十分に集まれば、出願する技術や発明が持つ魅力や社会的意義を書類に盛り込めます。
出願時に欠かせない論理的な説明力と聞く力は両輪と考えて良いでしょう。
なお発明者が説明力やコミュニケーション力に長けているとは限りません。上手に答えを引き出せるように質問に工夫を凝らせるとなお良いでしょう。
知的好奇心が旺盛な人
最後に知的好奇心が旺盛な人も弁理士に向いています。弁理士として活躍するには、まず出願予定の技術や発明の内容に興味を持たなくてはいけません。
新しい技術や発明の内容を理解することが特許権獲得への第1歩です。
また腕の良い弁理士になるには、最新の法律の動向や世界経済の情勢にもアンテナを立てておくことも欠かせません。
出願の際は最新の動向を盛り込むことで、より説得力のある出願書類を作成できます。
弁理士の仕事はハードな部分もあるため、新規の技術やアイデアに触れて楽しむことでやりがいを感じやすいです。
弁理士になると後悔する人の5つの特徴
弁理士に不向きな人の特徴も一緒に知っておきたいですよね。弁理士になると後悔する人の特徴は以下の5つです。
論理的な文章が書けない人
まず論理的な文章が書けない人に弁理士は向いていません。弁理士で最も主要な業務である特許の出願では、最新の情報に基づいた論理性のある文章を書く必要があります。
逆に文章の内容が感情に基づいていたり稚拙なものだったりする場合、特許は下りにくいです。論理的な文章を書くのが苦手な場合、弁理士の仕事は難しいでしょう。
語学力に自信のない人
また語学力に自信のない人は弁理士も向いていません。特許出願の案件は世界的に増えている一方、日本国内のものは減少傾向です。
海外向けのものが伸びているため、今後弁理士として生き残っていく上で英語や中国語のスキルは欠かせません。
語学力に自信がない場合、弁理士として活躍するのは困難です。
好奇心があまりない人
好奇心があまりない人も弁理士は難しいでしょう。弁理士として仕事する際、企業や発明者から出願予定の技術の内容や強みについて情報を集めなければいけません。
他にも新しい技術に対してワクワクできないと、大変な部分の多い弁理士の仕事を楽しめません。
弁理士の仕事を長く続ける上で好奇心も重要であるため、あまり持てないと苦労するでしょう。
一人の作業が好きではない人
一人での作業が苦手な人も弁理士には向いていません。弁理士は一人で案件を担当することが多い分、チームで何かする形にはなりにくいです。
誰かがそばにいなくて不安を感じやすい人の場合、業務に支障が出ることもあります。一人作業に不慣れな人の場合は弁理士は難しいでしょう。
自分の意見ばかり言う人
最後に自分の意見ばかり言う人も弁理士の適性が低いです。弁理士は仕事の中でクライアントや発明者の話を聞く場面が多くあります。
クライアントなどの話を聞いた上でしっかり消化しなければいけないため、ヒアリング能力の高さが重要です。
しかし自分の意見ばかり言っていると、逆にクライアントから必要な話を聞けなかったり信用を失ったりします。
出願の成否だけでなく勤務先の存続にも関わりかねないため、自分の意見ばかり言う人は弁理士に不向きです。
就職時に特許事務所を選ぶ4つの方法
弁理士として働く際、特許事務所の選び方も知りたいですよね。就職する際にうまく特許事務所を選ぶポイントを4つご紹介します。
事前の情報収集は不可欠
まず応募する特許事務所に関する情報収集が欠かせません。
弁理士も含めあらゆる仕事で就職活動するには、応募先に関する情報をもとにしっかり選考対策することが重要です。
特許事務所の中にはブラックなところもあるため、自分の身を守るためにも働きやすい事務所を選びましょう。おすすめな特許事務所の特徴は以下の通りです。
- 特許出願の案件が多い
- 教育体制がしっかりしている
- 成果を上げるほど稼ぐ傾向が強い
- 多様な働き方を認めている
特許出願の案件が多かったり成果に基づく傾向が強かったりする事務所であれば、将来的に高い年収を稼げます。
また教育体制がしっかりしているところほど、所属後にスキルや経験の面で成長しやすいです。
加えて多様な働き方を認めていれば、ライフイベントがあっても安心して働き続けられます。
転職サイトなどを活用するのがおすすめ
なお自分でうまく探せる自信がない場合は、転職サイトなどの求職サービスを使うのがおすすめです。
転職サイトでは優良な求人を扱うだけでなく、各求人に関する細かい内部情報が蓄積されています。
事務所見学や逆質問も活用する
また事務所見学や逆質問もおすすめです。選考の前に事務所を見学すると、職場の雰囲気や労働環境を肌で感じられます。
加えて面接時には必ず最後に逆質問の時間があるため、ぜひ利用すべきです。逆質問で離職率や1人当たりの担当案件数も聞いておくと、より事務所の良し悪しを判断できます。
クライアントや案件数も調べておく
応募しようとしている事務所のクライアントや案件数も調べておくべきです。クライアント企業については、有名どころや大手企業が並んでいるほど信用性が高いとみなせます。
一方案件数も多ければ多いほど、入所後に大きく稼げる機会が豊富です。逆にあまり案件数が少ない場合、年収が伸び悩むことが多いことから避けると良いでしょう。
評判や口コミのリサーチもおすすめ
最後に各事務所の評判や口コミのリサーチもおすすめです。評判・口コミでは、事務所の公式サイトや転職エージェントの提示した情報では分からない事情が見えてきます。
口コミを投稿しているのは、現在事務所で働いている人や辞めた人です。彼らの生の声をチェックすれば、事務所選びで非常に参考になるでしょう。
まとめ
「弁理士はやめとけ」と言われる理由を、弁理士のメリットや特許事務所の選び方とともに見てきました。
ブラックな特許事務所の存在・プレッシャーのきつさ・資格の取得の大変さなど理由は様々です。
一方で平均年収が軒並み高い点や様々な働き方ができる点などメリットも色々とあります。
また特許事務所を選ぶ際も事前の情報収集や口コミのリサーチなどを活用すれば、満足できる職場が見つかるでしょう。